「ファインディング・ドリー」を見ました。映像が素晴らしかったです。そしてストーリーはというと、ちょっぴり物悲しかったですね。
それというのも、ドリーには「短期記憶障害」というハンディがあるからなのですが、短期記憶障害というのは、何なのでしょう?
発達障害の「症状」の一つなのでしょうか。すると、ドリーは発達障害なのでしょうか。
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ドリーの短期記憶障害とは
ドリーは新しい人に会う度に、「こんにちは、わたしはドリー。わたしには短期記憶障害の病気があるの」と言います。
誰にでもそう挨拶するように、両親に教えられたからです。
映画を見ていると、ドリーは、確かにものを覚えるのが苦手なようです。
たとえば、幼いドリーに両親は「激流に近づいてはいけないよ」と、水の中で暮らす最も重要な注意点を繰り返し言うのですが、ドリーは意味は分かっても、次の瞬間にはそれを忘れてしまいます。
そして、「激流」に近づいて、水の流れに巻き込まれ、両親とはぐれてしまいます。
すると、ドリーは今度は、自分に両親がいたこと、やさしかったお父さんとお母さんのことさえも忘れてしまうのです。
ドリーには衝動性もある
また、時々ドリーはパニックになって、誰彼かまわず出会った海の仲間に、「助けて!」と言います。けれども、相手に何を助けてほしいか問われると、「何だっけ?思い出せない。忘れちゃった。」というのです。
そして、思い立ったら、「何々しなくちゃ」と思い、計画も立てずに後先かまわず行動してしまうので、周りの人はドリーの行動にたびたび振り回されてしまうのです。
空気が読めない 人の気持ちがわからない
クマノミのお父さんは朝早くに眠っています。ところが、ドリーは自分の思いでそわそわしてしまい、お父さんを起こしに行ってしまう。「まだ朝早いよ」と言われているのに、そう言われたことすら忘れてしまい、またお父さんを起こしに行って、お父さんはとうとう目が覚めてしまいます。
ドリーには、相手が眠い、まだ眠っていたい、ということがわからないようです。
他の場面ではドリーに協力しようとして、クマノミの子どものニモは怪我をしそうになってしまうのです。お父さんが心配そうにニモの様子を見ようとしますが、ドリーにはそれがわからない。
自分のことだけをお父さんに尋ねようとします。お父さんはそれどころではない。
ドリーが何度も同じことをきくので、とうとう「あっちに行って」「どうせ忘れるのだから」と強く言ってしまうのです。
これらの特徴から考えると、やはりドリーは発達障害、おそらくADHDなのだろうなと思います。
どうしてそれがわかるのかというと、私の身近にもそういう人がいるからなのですが。
素晴らしいドリーの両親
ドリーの両親は、言ったことをすぐに忘れてしまうドリーに同じことを何度も言い聞かせます。「激流に近づいてはいけないよ」
そして、ドリーが憶えられないとわかると方法を変えて、その部分を歌にして節をつけて「♪激流に近づいてはいけないよ~」と歌にすることで、ドリーに憶えさせようとするのです。
発達障害や他のハンディがある場合は、このような教育方法が工夫されており、このように教えることは「療育」と呼ばれます。
ハンディのある子どもたちは、早いうちにこのようにすれば憶えられる、物事をやり遂げられるという自分なりの方法を見つけていくことが大切なのです。
もっともこれは、障害のない人であっても同じことです。それぞれの子どもに個別に適した方法を見つけることが、教える側の仕事の一つであるとも言えます。
自信を失っていたドリー
ドリーのお母さんは「あの子は、ひとりでも生きていけるのかしら」と心配します。
そしてドリー自身も、「なんだかわからないけどなにかが起こったら自分が悪い。自分には障害があるから」だと思っていて、いつも「ごめんなさいごめんなさい」と謝ってばかりいます。
けれども、仲間たちはドリーにも良いところがあると認めてもいるのです。例えば、ADHDの衝動性と思える特徴は、行動的とみなされます。誰もそんな風に思い立って素早く行動できない。
「ドリーはすごいよ」「ドリーみたいにやってみよう」
長所と短所はいつでも裏表なのです。
自己肯定への道
そして、この映画の素晴らしいところは、それによって、ドリーが自分自身を認められるようになっていくことです。自分にもいいところがあるんだということを、ドリーは仲間を通して知っていくのです。
ああ、そういえば、前作「ファインディング・ニモ」においては、ニモは片方のひれが短いという設定になっていました。脚が7本しかないタコもそうです。
この映画を見ていると、ドリーだけではない、誰もがいろいろな個性を持っているということに気がつくでしょう。
それらの仲間に囲まれたドリーが、助けられ、あるいは仲間を助けたりしながら、両親に再会して自分を取り戻していくというのが、この長い心の旅の映画の結末なのです。
記憶障害のドリーが他者を避けずに、自分を諦めずに、前向き&友好的な生き方を出来るのは、両親が築き上げてくれた自己肯定感の基盤が安定しているからなんだろうな。
幼少期に受け取る無条件の肯定と愛情は、世界への尽きない信頼&生きる事への枯れない希望を創り出す一生の財産だと思う。 pic.twitter.com/IcqtbmTLdL— Eva (@evaeva61979707) 2018年6月22日
映画の描写も以前より美しくなったと言われていますので、ぜひお楽しみくださいね。