ステップファミリー

藤沢周平のドラマ 連れ子への過剰な愛情は配偶者の心の傷に起因する

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藤沢周平 文豪ファミリア

昨日のテレビ番組で、藤沢周平の若い日を描いたドラマ「文豪ファミリア 家族は見た!」というのが朝刊に載っていました。
藤沢役は原田龍二さん。写真を見ると、何となく風貌が似ているかなという感じです。 

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ママハハの和子さんのエピソード

ここ数年来、藤沢周平が好きで良く読んでいます。今年は藤沢の没後20周年です。

藤沢は若い日に奥さんを亡くし、八か月だった一人娘の展子(のぶこ)さんを、祖母の助けを借りながら、男手一つで育てました。

そのあと、後添えの和子さんをもらうのですが、和子さんと藤沢の子の展子さんとのエピソードを読んだことがあります。

新しいお母さんが来たのは展子さんが5歳の時。展子さんは産まれて間もなくお母さんが亡くなったので、実のお母さんのことは写真でしか知りません。

幼稚園の頃のある日、展子さんは近所のおばさんに「継母だから大変だね」と言われたそうです。
展子さんは家に帰って、お母さんに「継母ってなあに?」と訊いた。和子さんは答えました。

「ママハハっていうのはね、ママと母と両方だから、普通のママより二倍すごいママなのよ」

和子さんのユーモラスな子ども向けの答えには、思わず感心してしまいました。
私はその頃、子どものある人と再婚するとは夢にも思いませんでしたが、忘れられなかったものです。

ちゃぶ台返しの藤沢のエピソード

藤沢周平 文豪ファミリア

では、後添えの和子さんがこういう人だから 、家庭がうまくいったのか、というと、その他のエピソードを読んでいますと、やはり一筋縄ではなく、大変苦労されたろうなと思えるものがあります。

たとえば、展子さんが小学校1年生の時、皆で朝ご飯を食べていた。その朝はたまたま卵が1個しかなかったので、奥さんは藤沢の味噌汁に、その1個の卵を入れた。
すると、藤沢は子どもの方に卵を入れなかったということを怒って、ちゃぶ台をひっくりかえしたことがある、というのです。

私は藤沢は好きなのだけれども、このエピソードを読んだらさすがに少しがっかりしました。

うまくいかなかった再婚

藤沢周平 文豪ファミリア

藤沢は実は悦子さんの前にも、何度か後添えをもらっているのですが、うまくいかず、その度破談になったとも読んでいます。

展子さんのことばかりではないのかもしれませんが、もし、こういうことがあったのだとしたら、新しい奥さんも居つかなくて当然だったろうとも思います。

片方にだけ子どもが居るという場合は、やはり居ない人の方に負担がかかるのは間違いはなく、子どもが居る人の方は、その点でハンディを負った結婚といっていいですね。

それを自覚の上、その分のねぎらいや思いやりがなければ、ステップファミリーの夫婦の間はけっしてうまくはいきません。

最初の妻との死別

藤沢周平 

この辺りのエピソードが紹介されると、藤沢は娘を「溺愛していた 」という言葉で表現されます。

でも、それだけなのだろうか。私はそれも少し違うように思うのです。

24歳の時、藤沢は結核にり患します。働けるようになったのは、その6年後。さらにその2年後の34年に結婚。展子さんが生まれます。

しかし、その幸せは無残に崩れます。その8か月後に、展子さんのお母さんの悦子さんが、28歳の若さで癌で他界するのです。

藤沢がやっと命が長らえて、これからという時に、妻が死ぬ。そして、母の顔を知らない娘が残される。

終生消えることのない傷が藤沢に残ります。藤沢はどんなにか惨めであったでしょう。どんなに天を恨んだでしょう。
母の顔すら知らない、母に甘えることもできない子どもが、どんなに哀れに思われたでしょうか。

離別や死別で配偶者の受ける傷

連れ子

ステップファミリーでは、正確にはステップファミリーになる前の段階で、離婚や死別で傷を受けているのは子どもばかりではないのです。

私自身の場合もそうですが、癒しがたい傷を持っているのは、実は子どもよりも、配偶者の夫の方なのです。

片親の自分が居なければ、この子どもは天蓋孤独である。自分が行き届かなくて、母のない哀れな子どもに寂しいつらい思いをさせるようなことがあってはならない。

精いっぱい自分が守らなければ―――その思いが長く続いてしまうと、気持ちがゆき過ぎてしまって、解け難くなってしまっているのだと思います。

たぶん、展子さんのお椀に卵が入っていない、そのことに気がついた時、藤沢の胸には、妻が死んで、誰にもかえりみられることのないかわいそうな子ども、その子どもを腕に抱えて、妻を喪った自分とまだ話もできない子どもとたった二人で取り残された時の、不遇な時代の記憶がよみがえったのだと思います。

作品を読んで夫の心情を理解していた和子さん

和子さんは上のような出来事があっても、それで藤沢との家庭生活が終わりになることはなかった。

校正もしていた和子さんは、おそらく藤沢の著作をよく読んでいて、夫の考え方や感じ方を理解できたからではないかと思います。

若い日に妻をなくすという苦労をして、偏向ともいえるほど、かたくなに子どもを守らなくてはならないと思ってしまった夫、その夫の心を解くには、荷の半分を妻が負ってあげる以外にないでしょう。

私があなたの子どもを必ず守ってあげるから、安心していいのだと。
それ以外に夫を助ける術はありません。

別離の苦しみを越えて

連れ子に対しての溺愛や偏愛と思えるような配偶者の言動を見聞きすると、新しいお母さんは孤独に感じることも多くあります。

ただ、それをどう受け取るかによって、新しいお母さんの気持ちは変わってくると思います。

夫とよく話すこと、そして考え方や感じ方を知ることです。結婚してすぐなら夫との間がまだ浅い。

それまでの歴史の違いで行き違いが起こることは、子連れ再婚の場合ばかりではありません。双方が初婚の場合でも同様でしょう。

夫と子どもの歴史が、再婚した自分との間よりも長いこともありますが、夫と自分との関係はこれから積み上げていくものです。

子どもよりもまず、夫自身が、離別や死別の苦しみを乗り越えながら、今ここにある―――そう思ってみることが、ママハハの心の助けになるかもしれません。

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